ユニバーサルエッジについて
- katabahocho
- 2024年6月21日
- 読了時間: 8分
更新日:2024年7月1日
「ユニバーサルエッジは究極の切れ味を追求した包丁ではなく、総合性能を追求した包丁です」
というお話です。
ユニバーサルエッジの「概要・切れ味・総合性能・刃付け・安全性能」について書こうと思います。
ユニバーサルエッジ「PROCEED」

◎ユニバーサルエッジの概要
「ユニバーサルエッジ」とは、家庭用万能包丁の新しいカテゴリーです。
特徴は、主に「薄切りの刃離れ・砥ぎやすさ・汎用性・安全性」などが従来の家庭用万能包丁より優れていることです(実用新案登録済み)。
これまでに家庭用として存在していた包丁は、大きく分けて「しなる両刃(洋包丁)」と「しならない片刃(和包丁)」の2種類でしたが、両者の特徴を取り込んで完成したものが「しなる片刃」つまりユニバーサルエッジです。
開発された2018年当時、この包丁を的確に表現できる言葉がなかったため、のちに弊社がユニバーサルエッジという言葉を作りました(商標登録済み)。
洋包丁のしなりのある刀身に和包丁の片刃の刃付けをし、刃元側に薄刃包丁の特徴を取り入れることで、これまでの万能包丁に唯一足りなかった「安定した薄切り」を実現しました。
また、薄切りが安定するだけでなく、多くの包丁ユーザーが求めているにもかかわらず実現できなかった「薄切りの刃離れ」も実現し、最高レベルの万能性を手に入れた便利な包丁です。
ユニバーサルエッジは、新潟県のデザインコンペ「ジャパン・ツバメ・インダストリアルデザインコンクール2024」で、優秀賞のひとつ「新潟県知事賞」を受賞しました。
受賞の後、新潟県庁を訪問し、花角知事に直接ユニバーサルエッジの説明をさせていただきました。
当日の様子はコチラです。
今年3月にアップした「ニンジンの薄切り」のショート動画は、TikTokとインスタグラムで合計約4000万回再生され、世界中に知られるようになりました。
現在、国内外の問い合わせに対応しながら、ユニバーサルエッジの量産方法を模索中です。
※6月末の時点でユニバーサルエッジは完売し、次の入荷があり次第再販の予定です
TikTok動画(ニンジンの薄切り)
◎ユニバーサルエッジの切れ味
ユニバーサルエッジの切れ味は、「究極の切れ味」ではなく、家庭用万能包丁の総合性能のひとつとして求められる「実用的な切れ味」です。
「実用的な切れ味」とは「家庭で手軽に維持できるそこそこの切れ味」ということです。
切れ味を維持するために毎日10分砥がなければならないようでは実用的とは言えません。
「切れ味」にもいくつかあり、代表的なものは以下の4つです。

たとえば、「1 接触(刃先の仕上げの鋭さ)」は、トマトの皮や鶏肉の皮の接触初期の切りやすさに大きく影響し、その他「2 切り刃の砥ぎ角」や「3 刀身の薄さ」は、硬い食材を切ったときの切り込み抵抗と切り抜けに影響し、「4 刃付けの割合」は、切り抜ける方向に関係し切れ味に影響が出ます。
以下、ユニバーサルエッジの特徴を緑色の楕円で囲みました。
肉などの軟らかい食材の切れ味と野菜の薄切りや皮むきなどがユニバーサルエッジの得意な分野、ニンジンの乱切りなど、硬い食材を切り分ける作業は苦手な分野と言えます。

また、これら4要素の組み合わせに加えて、ホロー・フラット・コンベックスの組み合わせ、刀身全体の断面の形、包丁の素材、使う砥石などによっても切れ味が変わります。
さらに、切る対象や刃の耐久性の考慮による刃付けと、その刃付けの維持のしやすさ、そして最後には個人の好みもあります。
同じ包丁を使っても人によって感じ方が違うので、実際は「切れ味」にも無数の種類があります。
ユ二バーサルエッジの切れ味は、具体的には以下ページの動画が参考になると思います。
家庭用万能包丁として充分な切れ味だと思います。
鶏もも肉
トマト
玉ねぎ
※動画のような切れ味を1日3円程度の低コストで維持できるのもユニバーサルエッジの特徴のひとつです(切れ味と維持コストの関係についてはこちら)
ユニバーサルエッジの切れ味は特別なものではないので、ご家庭でも鶏もも肉とトマトは動画のように切ることができます。
動画と同じように切れないなら、お使いになっている包丁の切れ味が落ちているか、切り方が違うからかもしれません。
※玉ねぎのみじん切りはユニバーサルエッジ独自の切れ方です。
※切り方と切れ味の関係についてはコチラ
※安定した薄切りの刃離れの動画はコチラ(ブログ中に大根と紫玉ねぎの薄切り動画があります)
◎弊社が考える家庭用万能包丁に求められる性能
家庭用万能包丁に求められる性能はたくさんありますが、弊社は主に以下を考えています。
ユニバーサルエッジの総合性能は、下記5をのぞき全て最高レベルです。
1:汎用性の高さ(どんな作業でもできる)
2:大きな食材の処理のしやすさ(刃渡り・ハンドルの太さ)
3:細かい作業のしやすさ(切っ先の細さ)
4:薄切りや千切りのしやすさ(片刃が得意)
5:硬いものの切りやすさ(切り分け・乱切り)
6:野菜の刻み作業のしやすさ(刃線の適応性)
7:手首の疲れにくさ(重心位置・重さ・しなり)
8:皮むきのしやすさ(片刃・軽量)
9:刃離れの良さ(ユニバーサルエッジ)
10:パンの切りやすさ(刃渡りの長さ)
11:錆びにくさ(素材)
12:砥ぎやすさ(素材・刃付け)
13:刃線の維持のしやすさ(しなり)
14:切れ味の良さ(砥ぎやすさ)
15:切れ味の維持のしやすさ(砥ぎやすさ)
16:衛生の保ちやすさ(口金・ステンレス)
17:保管のしやすさ(1本だけ)
18:価格(高コスパ)
19:切れ味維持のコスパ(低コスト)
20:刃の減りにくさ(包丁の寿命アップ)
以下の表は、従来型万能包丁とユニバーサルエッジの総合性能を比較したものです。
「硬いものを半分に切る(乱切りも含む)」という項目が従来型より劣りますが、その他はユニバーサルエッジが優れています。
●従来型万能包丁とユニバーサルエッジの総合性能の比較10項目
◎ユニバーサルエッジの刃付け(2024年現在)
ユニバーサルエッジをご家庭で砥ぐときは、付属の「簡単包丁砥ぎセット」を使い、砥ぎ角「18度」、砥石は「仕上げ砥石(5000以上)」をお勧めしています。
簡単包丁砥ぎセット

ただし現在販売中のユニバーサルエッジの新品時の刃付けは、砥ぎ角18度以下、中砥石の仕上げです。
手作業による誤差で砥ぎ角が18度より鈍角になると、ご自宅で18度に砥ぐときに刃がつきにくいからです。
また、中砥石で仕上げる理由は、砥ぎ角が鋭角になることで毛細管現象が起こりやすくなるため、切り刃の表面をあえて鏡面にしないことによって、少しでも毛細管現象を軽減するためです。
これで18度未満の鋭い砥ぎ角になっても、刃離れ効果が維持しやすくなります。
※刃離れ効果を生む要素は、「刃付けの角度・切り刃の表面の粗さ・刃先の厚さ」などがあります。
ご家庭で「仕上げ砥石」を使うことをお勧めする理由は、「18度」の補助器具が付属しているので、粗めに砥がなくても毛細管現象が起こりにくい角度で砥げること(刃離れ効果が出せること)、刃が減りにくいこと(包丁の寿命が延びる)、刃先のザラツキ感がなく切り心地が良いこと(切るのが楽しい)、砥石が減りにくいこと(コストダウン)、周囲が汚れにくいこと(時間の節約)などがあります。
※新品時の刃付けについては、より良い方法が見つかり次第、予告なく変更する場合がありますが、現在は上記のような理由で中砥石で浅めの角度になっています
◎ユニバーサルエッジの安全性能について
ユニバーサルエッジの安全性能は、私の経験から発案されています。
切っ先とアゴと峰でケガをし、アゴ上の角で痛みを感じながら仕事をした経験があり、それらを予防するために考えました。
具体的には下記の処理を標準仕様としています。
1:切っ先の丸め
2:アゴの丸め
3:峰のハイブリッド処理
4:アゴ上の丸め
従来型の家庭用万能包丁にも、切っ先やアゴを丸めたものはあります。
しかし、主に子ども用や欠けやすいセラミックなどの刀身に採用されているだけで、家庭用万能包丁に採用されている例は稀です。
また、切っ先とアゴを丸めた包丁のほとんどが、切っ先やアゴを使う作業ができないほど大きく丸めてあり、実用性が損なわれています。
ユニバーサルエッジの処理方法は、人を傷つけず、かつ切っ先やアゴを使う作業にも使える丸め方です。
峰のハイブリッド処理やアゴ上の処理も、利便性を損なわず指のケガや痛みを予防する大切な安全性能です。
弊社では、上記のような安全性能の標準装備が、SDGs12「つくる責任」を果たすことにつながると考えています。
たとえば車業界では、すでにアンチロックブレーキやエアバッグなどが軽自動車でも標準装備になり、衝撃軽減ブレーキ・接近警告ブザーなどの新しい安全装置も多くの車種に採用されつつあります。
包丁業界でも、上記4つの安全性能が徐々に普及することを願っています。
<試行錯誤しながら挑戦を続けます>
ひとつの包丁に上記4つの安全加工をするのは業界初の試みのため、一貫して行なえる工場がなく、全て弊社関連のスタッフの手作業により、試行錯誤しながら作業効率の良い方法を探しています。
包丁をよく見ると、小さな擦り傷など、作業をした人の「不慣れな部分」があるかもしれません。
仕上げ後は必ず検品し、家庭用万能包丁としての性能が発揮できると判断されたものを発送していますので、細かな傷などは予めご了承いただければと思います。
今後も新しいことに挑戦していきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
◎まとめ
ユニバーサルエッジは総合性能を追求した新しい家庭用万能包丁です。
性能を発揮するために多額の費用や専門家によるメンテナンスを頻繁に必要とする包丁は、家庭用として高性能と言えるか疑問です。
ユニバーサルエッジは、高い総合性能を低いコストで手軽に維持できることが特徴です。
今回は以上です。